令和6年4月号

税務:所得税・住民税の「定額減税」のポイント

1.従業員の家族構成に注意

定額減税に伴う給与計算事務では、従業員の家族構成等が大きく影響します。そのため、給与計算担当者は、従業員から提出された「扶養控除等申告書」等を基に、各従業員の配偶者を含めた扶養親族の人数等を正しく把握する必要があります。

また、春は就職や転職等に伴う異動が多くなる時期でもあります。定額減税が始まる6月1日までに扶養親族の異動があった従業員がいる場合には、①当該従業員から、その異動後の最初の給与の支払日の前日までに「扶養控除等申告書」の再提出を受ける②年末調整で調整するーーー等の対応を行うことになります。


2.個人事業者の定額減税について

個人事業者(令和6年分の合計所得金額が1,805万円以下)についても、定額減税の対象です。本人と、同一生計配偶者または扶養親族(いずれも居住者)1人につき4万円(所得税3万円・住民税1万円)の定額減税が行われます。


(1)所得税の定額減税の方法

①予定納税の対象者の場合

令和6年分の所得税に係る第1期分予定納税(7月)から本人の減税額が控除されます。控除しきれない場合は、第2期分予定納税額(11月)から控除されます。予定納税でも控除しきれない場合等は、確定申告で調整します。

同一生計配偶者または扶養親族に係る減税額については、「予定納税額の減額申請」の手続きにより、第1期分及び第2期分の予定納税額から控除することができます。

なお、定額減税の実施に伴い、予定納税に関しては次の措置が講じられることとされています。

〇令和6年分の第1期分予定納税の納期の延長

令和6年7月1日から9月30日まで(現行:令和6年7月1日から同年7月31日まで)

〇令和6年6月30日の現況に係る予定納税額の減額申請の期限の延長

令和6年7月31日(現行:令和6年7月15日)


②予定納税の対象者以外(予定納税基準額15万円未満)の場合

令和6年度分の所得税確定申告で、減税額を控除することになります。


(2)住民税の定額減税の方法

令和6年度分の住民税(所得割の額)から、以下の減税が行われます。

・本人1万円

・控除対象配偶者または扶養親族(いずれも国外居住者を除く)1人につき1万円

(注)控除対象配偶者を除く同一生計配偶者(国外居住者を除く)については、令和7年度分の所得割の額から1万円が控除されます。

令和6年度分の住民税の第1期分の納付額から減税額を控除し、控除しきれない場合は、第2期分以降の納付額から順次控除します。


【参考】

国税庁「令和6年分所得税の定額減税Q&A」(令和6年2月5日)

総務省自治税務局市町村税課「個人住民税の定額減税(案)に係るQ&A集」(令和6年1月29日<第1版>)


労務:従業員の残業時間を正しく把握していますか?

1.事業・業務ごとの時間外労働時間の上限

時間外労働時間の上限には、事業・業務によって例外が設けられています。一覧にすると次のようになります。



2.建設業・自動車運転の業務・医師の時間外労働について

これらの事業・業務では、その特性や取引慣行等の課題があることから、「1.」の表のとおり一部特例付きで上限規制が適用されます。また、長時間労働の改善に向け、それぞれ次のような取り組みが行われています。

●建設業

令和2年7月に、中央建設業審議会において「工期に関する基準」が作成されました。適正な工期の設定や見積にあたり、発注者及び受注者(下請負人を含む)の双方が考慮すべき事項が解説されています。




●自動車運転の業務

厚生労働省の「自動車運転者の長時間労働改善に向けたポータルサイト」では、トラックやバス、タクシー等自動車運転者の働き方改革を進めるため、事業者側が対応すべきことだけでなく、荷主や乗客となる側が協力できることについても情報発信が行われています。



●医師

厚生労働省は、「『医師の働き方改革』.jp」や「上手な医療のかかり方.jp」などのWebサイトで、医師の長時間労働改善に向けた取り組みへの協力を呼びかけています。特に後者では、患者側が協力できることとして、夜間・休日に子どもの症状について電話で相談できる「#8000」(全国で実施)や、夜間・休日に大人の症状について相談できる「#7119」(一部地域で実施)等が紹介されています。



法務:令和6年4月1日から義務化! 相続で不動産を取得したら登記が必要です

1.相続登記の義務化の背景

不動産登記簿を確認しても所有者が直ちに判明しない土地や、所有者が判明してもその所在が不明で連絡がつかない土地を「所有者不明土地」といい、周辺の環境悪化や不動産の取引・公共事業の阻害が発生する等、社会問題となっています。

国土交通省の調査(令和4年度)では、全国における所有者不明土地の割合は、国有林野等を除く地域(地籍調査の対象地域)の24%、その原因として、相続登記の未了(61%)、住所変更登記の未了(35%)が挙げられています。

このような所有者不明土地の問題を背景に不動産登記制度の見直しが行われ、その1つとして「相続登記の義務化」(令和6年4月1日施行)がスタートすることになりました。

なお、不動産の相続が発生した際の具体的な手続き等については、下記法務省のWebサイトもご参照下さい。



2.住所等の変更登記の義務化

相続登記だけでなく、令和8年4月1日からは住所等変更登記も義務化されます。現在は任意であること、また、自然人・法人を問わず、転居・本店移転等のたびに登記することへの負担から、登記が放置されやすいことがその背景にあります。

こうした状況の改善のため、所有権の登記名義人に対し、住所等の変更日から2年以内にその変更登記の申請をすることが義務付けられます(正当な理由のない申請漏れには5万円以下の過料の罰則あり)。施行日前の住所等の変更であっても、未登記であれば、義務化の対象となります(2年間の猶予期間あり)。

【参考】法務省民事局「民法等一部改正法・相続土地国庫帰属法の概要」(令和6年1月)


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