令和4年4月号

税務:中小企業の賃上げ税制の動向

1.中小企業の賃上げ税制のポイント

雇用者全体の給与総額(雇用者給与等支給額)が前年度比1.5%以上増加した場合、給与増加額の15%が税額控除される点は従前と変わりません。改正により税額控除率の上乗せ要件が見直され、前年度比2.5%以上の給与総額の増加や教育訓練費の増加等のいずれかのみでも税額控除率が上乗せされます。

従前
(改正前)
下記の要件を満たせば税額控除率は25%
〇雇用者給与等支給額:前年度比2.5%以上の増加
かつ
〇教育訓練費の増加等
 ※次のいずれかの要件を満たすこと
  ア:教育訓練費の前年度比10%以上の増加
  イ:中小企業等経営強化法の認定経営力向上計画における経営力向上の証明
改正後前年度比2.5%以上の賃上げのみで税額控除率は30%
更に教育訓練費の増加等によって税額控除率が10%上乗せされ、最大で40%。

【賃上げ要件】税額控除率30%
〇雇用者給与等支給額:前年度比2.5%以上の増加
【教育訓練費の増加等による上乗せ要件】税額控除率を10%上乗せ
〇教育訓練費の前年度比10%以上の増加
(給与総額の増加が前年度比1.5%以上の場合でも、教育訓練費を前年度比10%以上増加させれば、税額控除率が上乗せされ25%)

2.税制の恩恵を受けられない企業はどうする?

赤字などで業況が厳しい中にあっても賃上げ等に取り組む中小企業向けとして、補助金の特別枠が創設され、優先採択や補助率引上げが行われます。

(1)ものづくり補助金(正式名:ものづくり・商業・サービス生産性向上補助金)

ものづくり補助金は、中小企業・小規模事業者等が今後複数年にわたり相次いで直面する制度変更(働き方改革や被用者保険の適用拡大、賃上げ、インボイス導入等)などに対応するための設備投資等を支援する制度となっています。

(2)持続化補助金

今般、支援の拡充として、特別枠「成長・分配強化枠」の創設のほか、適格請求書発行事業者へ転換する事業者向けにインボイス発行という環境変化への対応を支援する特別枠として「インボイス枠」も新設されます。

〇成長・分配強化枠:最大200万円、補助率原則2/3(赤字事業者は3/4)

〇インボイス枠:最大100万円、補助率2/3

なお、上記補助金の要件の詳細は未確定ですので、今後の情報に注意が必要です。


会計:どうする?!売掛金を回収できない場合…~滞留債権への対応編~

まずは取引先の状況を正確に把握し債権回収の方針を決めること、そして回収等においては訪問、電話をした日時を記録しておく必要があります。

滞留債権の貸倒損失の計上について

貸倒損失の計上は実務で問題となることが多いところですが、事実関係をよく確認し検討することが必要です。回収不能の状況になった売掛金等について、決算日までに次の検討を行います。

法人税における貸倒れの要件を満たしている場合には、貸倒損失として計上します。検討の結果、貸倒損失の計上は難しくても個別評価の貸倒引当金の要件を満たす場合には、法人税法の手続きに従い貸倒引当金繰入額を費用として計上します。

(1)貸倒れの要件

①法律上の貸倒れ(法基通9-6-1)

民事再生法等による再生計画の認可の決定により債権額の切捨てがあった場合など(回収見込みのない売掛金の「債権放棄の通知」による貸倒れも含まれる)

②事実上の貸倒れ(法基通9-6-2)

債務者の資産状況、支払能力等からみて、債権の全額が回収不能となった場合(損金経理の要件あり)

③形式上の貸倒れ(法基通9-6-3)

売掛債権について、継続取引を行う債務者との取引停止後1年以上を経過した場合又は同一地域の債務者の債権総額が回収旅費等に満たない場合(損金経理の要件あり)

(2)個別評価の貸倒引当金(法52①、法令96①)

個別評価金銭債権の債務者について、更生計画認可の決定等によりその弁済が猶予又は賦払いなど特定の事由が生じた場合に一定の金額を貸倒引当金繰入額として費用に計上できます。


トピック:令和4年度の税制改正点~減価償却資産の基礎知識~

1.令和4年度の改正点

令和4年度税制改正では、中小企業者の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例、及び10万円未満の少額の減価償却資産、20万円未満の一括償却資産について、対象資産から貸付けの用に供した資産を除外する改正が行われます(なお、主要な事業として行われるものは除かれます)。

令和4年度税制改正後に、少額減価償却資産を主要な事業以外で貸付けを行っていた場合、少額減価償却資産の損金算入の特例の適用は受けられないので、この適用対象外となる少額減価償却資産は資産計上をして、その資産の耐用年数に応じて減価償却費(損金経理)を計上することになります。

なお、この取扱いは令和4年4月1日以後に取得等する少額減価償却資産について適用されますので、同日以後に事業年度が終了する4月決算法人等において影響が出てくる場合があります。


2.少額減価償却資産の即時償却

(1)10万円未満の少額の減価償却資産

取得価額が10万円未満、または使用期間が1年未満の少額の減価償却資産については、事業の用に供した事業年度において、その所得価額の全額を損金経理している場合に、損金の額に算入することができます。

(2)中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例

この特例の適用を受けるためには、事業の用に供した事業年度において、その取得価額に相当する金額について損金経理をするとともに、確定申告書等に少額減価償却資産の取得価額に相当する明細書(別表16(7))を添付して申告する必要があります。


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岸野有紀公認会計士・税理士
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